五七五七七で学ぶ「こころ」の掴み方
お待たせしました!当初、12月に開催を予定しておりましたこちらの企画、本日ようやく実施することができました!
「ホスト万葉集」編者と詠む
五七五七七で学ぶ「こころ」の掴み方
~言葉の体温をフル活用し、あなたとしかできないミュニケーションを。ビジネスのヒントは短歌にあり!~
講師は歌人の野口あや子さん。最近では短歌というジャンルに縛られず音楽やアートなど様々な領域でのコラボレーションにも果敢に挑戦されています。
短歌はビジネスにも応用できるのか⁉ そんな『問い』から生まれたこの企画、今日のテーマは「水」です。さぁ感情を揺さぶりましょう!
野口さん:「今日は少し合理性を捨てて、感情のリミッターを解放してみてください!(はい!!)」
まずはウォーミングアップです。「水」から連想するキーワードを付箋に書き留めてみてください。
(「水」を飲んだり、匂ったり、光に透かしたり、眺めたり、ゆすったりしながら…)
えっ、このキーワードからインスピレーションを得て即興で歌を詠まれるんですか⁉(参加者のメモからいくつか貼り貼りだして…)
《変化/柔軟/一日水星/水の運命》
われは水
流されながら
ねじれつつ
一日水星
とどまらずあり
《い(ゆ)がむ》
目の前に
ボトルをかざし
覗いたら
ゆがんで見える
いがんで見える
《生命/水は生命維持には欠かせない》
からだから
出るものがあり
入るものありて
70%の
水よ
《霧雨》
新しい傘を
買ったら
降ってきた
はらりはらりと
白い霧雨
それぞれ、固い印象の漢字を柔らかい語句に置き換えたり、リフレイン(繰り返し)を叫んだり、最後にインパクト(70%)を持ってきたり、オノマトペで遊んでみたりと…参加者から思わず感嘆の吐息が溢れます「凄い…」。
詠み方のコツを教えていただいたところで、いよいよ短歌づくりにチャレンジします。
どれも力作ですね、歌にも個性がハッキリと現れています(数首ご紹介します)。
「かさぶたの 渇いた器 嗚咽して
求めた愛よ 我にもたらし」
「苦しい もがいてみても 前が見えず
海と私 コロナと私」※大学生の歌
「子どもらが 毎日使う 水筒の
大きさ変わる 季節が分かる」
「水のごと 流れにまかせ 生きてみる
それならそれで なんとかなるな」
「泣く赤子 命溢れる 今日の日を
めぐりめぐれて 我忘れん」
短歌をじっと見つめる野口さん、いかがですか⁉
「凄い、こんな歌詠みたい…。」
「作風が表れてますね。ミステリーです、これは面白い!」
「水と薔薇をテーマに10首ぐらい詠んでみて欲しい…。」
思わぬ⁉高い評価に参加者の頬も緩みます。
そして、せっかくなので野口さんの心に刺さった短歌3首を選んでいただきました。結果は…。
金賞
ふるさとの 川で何度も 見送った
水に何度か 自販機で会う
銀賞
傘の柄に テープの目印 貼ったのに
誰と行ったの 濡れて帰る日
銅賞
ゆらぐとき どっちがよいか 決めきれず
とりあえず飲む 水の冷たさ
選ばれた皆様、おめでとうございます!
駅までお送りする車の中で「今日は皆さんが熱心で楽しく、いい汗をかきました」との感想をいただきました。
野口さん、最高の誉め言葉、ありがとうございます。次回は街歩きしながら「西条酒」や「お好み焼き」で一首お願いいたします!
《講師紹介》
歌人・作家 野口 あや子
短歌新人の登竜門「短歌研究新人賞」を寺山修司以来の十代で受賞。
2010年に第一歌集『くびすじの欠片』で現代歌人協会賞を受賞し、最年少記録を作った。ほかの歌集に『夏にふれる』、『かなしき玩具譚』、『眠れる海』がある。人工知能歌人(AI歌人)への短歌アドバイザーなど活動の幅を広げ、2019年、短編小説「ジュリアナ様」が「小説新潮」に掲載され、小説家デビュー。
【後日談】2021.5.25追記
野口さんは、このイベントの後、その足で宮島、尾道へ行かれたとのこと。
後日、旅の道中で詠まれた短歌を送ってくださいました。
旅の情景や野口さんの気持ちが伝わってくる素敵な短歌をこちらで紹介させていただきますね。
(水を想えば)
揺れながら 足元に粟 立ちてくる さざなみほどの 生活(たつき)とおもう
(水を想えば)
蛇口から ほとりほとりと わたくしへ つながるみずの ような感情
(宮島 菊乃家にて)
ゆるゆると 足場やさしく 一歩目も 最後もきみが 決めるのだから
(宮島にて)
宮島に ありたけの牡蠣を ほおばれば 口中にひらく あわい乳白
(焼き牡蠣屋にて)
がらがらと 殻を剥がせば 見えるだろう きみの抜き身の こころのやわさ
(宮島から広島市へ)
水がひかりに 跳ねてひかりを たくらんで 紺の海へと また還るとき
(広島市ホテルにて)
まなぶたを 摘まれたような ここちして 目を覚ましたら しらじらと朝
(尾道からフェリーにて)
白波を やぶりて生るる 白波の ほのあかりする 尾道の昼
(花見名所の案内を得て)
きみが見る さくらの奥に わたくしの 顔があるのだ 恋があるのだ
(花見にて)
底冷えの さくらのなかで 産まれざる 子らのまなこが ひらきやまずも
(広島駅にて)
銀のへら 上下左右に 鳴りひびき できあがりたり 広島焼きは
(帰宅)
本当の 旅終えるごと すうるりと 黒いキャリーの ファスナーひらく
(友人へ)
地酒だよと おもおも取り出す 紙袋 金のラベルが さらりと照って
野口さん、心温まる素敵な贈り物をありがとうございました!